シンフォニーマーケティング株式会社 庭山氏独占インタビューVol.2

みなさん、こんにちは。

第1回では庭山氏が感じた日本のBtoBマーケティングについての話が印象的でした。第2回ではインサイドセールスの設計や運用方法についてお話をうかがいます。

シンフォニーマーケティング株式会社
代表取締役
庭山 一郎氏
1990年9月シンフォニーマーケティング設立
データベースマーケティングのコンサルティング、インターネット事業など数多くのマーケティングプロジェクトを手がける。1997年よりBtoBにフォーカスした日本初のマーケティングアウトソーシング事業を開始。製造業、IT、建設業、サービス業、流通業など各産業の大手企業を中心に国内・海外向けのマーケティングサービスを提供している。海外のマーケティングオートメーションベンダーやBtoBマーケティングエージェンシーとの交流も深く、長年にわたって世界最先端のマーケティングを日本に紹介している。

以前より日本企業にはデマンドセンターが必要と提唱されていますが、それぞれの工程で気を付けるべき点と成果を上げる為のポイントは何でしょうか?

今の日本企業の最もダメなところが、部分最適です。部分最適は絶対に成果が出ません。デマンドセンターが持つ機能として、「見込み客を集める/Lead Generation」「有望見客を育成し絞りこむ/ Lead Nurturing&Lead Qualification」があります。それぞれ個別の目標設定をするのは良いですが、全体設計との整合性を持たせないという点がダメなのです。

デマンドセンターのそれぞれの目標管理はどのようにすべきでしょうか?

簡単にお話すると、後工程で必要な数を加味して逆算で考えることが必要です。全体設計の中で数値の整合性が取れていなければ全く意味がありませんので、そこは注意が必要です。目標は新規契約数、売上、トライアル、デモ予約、資料請求などと企業ごとに違いますが後工程で必要な数から逆算すれば簡単に設計ができます。

数字の整合性が取れていない場合は、全体設計を見直すべきです。アポ率の設定によっては、最後のクロージング受注金額と合わなくなってきます。そしてコールリストが膨大に必要になり、新しく獲得したリードにコールドコール(cold call)をする為、獲得した瞬間からリストが枯れていきます。弊社では焼畑と呼んでいます。
コールドコールは基本的には枯れていくので焼畑ということを認識していただきたいです。

私はインサイドセールスの設計を誤ると害を及ぼすこともあると考えています。マーケティングのファネルをイメージしてください。マーケターは、良いナーチャリングをして良いリードを出したいと考えています。営業は良質な商談に臨みたいと考えています。そこに考え方の乖離はありません。

ところが、マーケターと営業の間にインサイドセールス部隊を構築すると少し考え方が変わります。例えるなら、製造業で高い機械を購入したとします。購入後、その機械が稼働していないのは勿体ないという考えや不安に駆られます。その為、利益が出ないような仕事も受け、結局のところ二束三文の儲けにしかならない。利益が出るならまだ良いですが、下手をすると赤字になってしまう。本来ならば、儲からない仕事を受けるよりは機械を止めておいた方が良いのです。しかし、経営者の心理は「高いお金を払って機械を買ったのだから、稼働しないのは勿体ないし不安だ。稼働させよう!」となるのです。インサイドセールスも同様です。インサイドセールス部隊はリストが無ければ、やることがありません。
10人のチームに対して、十分なリストが無ければ全員がフル稼働することはありません。仕事が無ければ給料が下がる、部署移動になるかもしれないという不安から、コールドコールを始めてしまいます。コールドコールからのリードは質が良いとは言えません。
中にはそこから受注に繋がることもありますが、数%程度でしょう。マーケターは「そんなリストに荷電するなよ。せっかく集めたリードを枯らすな」と言い、営業は「そんな無理やり取ったアポになんか訪問したくない」と思い、結果的に誰も幸せにならないのです。こうした矛盾をしっかりと考えたうえで設計・運用することが非常に大切です。

―何故そうした矛盾が起こってしまうのでしょうか?
インサイドセールスが流行ってるので、自社でも作ろうと考えるまでは良いのですが、マーケティングの全体設計の中で作ることを忘れてしまっているからです。
これも例え話になりますが、営業が訪問できる件数が月に50件だと仮定します。
それ以上のアポを取得しても営業が訪問できないので、本来であれば50件以上は不要です。
50件以上のアポを取得しなければ達成できない目標であれば、全体設計がおかしいということです。
インサイドセールス部隊が50件のアポを取得するのなら、必要なSAL、リード数、コール数を逆算し、必要な人員だけを用意することが重要です

まだマーケティングにそれほど注力されていない企業がこれから施策を始める際、まずはMAやインサイドセールスの導入を部分的にするのと、まとめて導入するのではどちらがよろしいでしょうか?

これには2つお話をさせていただきます。
1つ目は、設計です。更地の土地を所有していてお金もある方から、ビルを建ててくれと依頼されました。しかし設計図なしではビルは建てられません。そもそもビルと言っても何に使うのか、マンション、オフィスビル、商業施設、用途によっても全く違います。
最初の全体設計が何よりも大切なのです。

2つ目は、ツールです。これまで、日本国内で累計4000のMAツールが売れていると言われています。あくまでも累計ですが、その中できちんと稼働しているMAツールは5%程度しかありません。
ツールがすべて自動化してくれるというお客様が明らかな勘違いを、売り手が正さずに販売してしまうことも原因の1つです。これは絶対に良くないと思います。営業は「ツールの操作は簡単です」と説明します。「ツールを使って効果的なマーケティングを実践するのは経験や知識などが必要で難しい」とは決して言いません。お客様は、これを同義だと勘違いしたまま購入してしまうのです。中にはMAツールを利用するとマーケティングができるようになると思っている方も少なからずいます。知識が無い方が買ってしまうのがダメなのではなく、きちんとマーケティングの設計をしたうえで購入しなければならないという話です。

1つ目は設計の話、2つ目はツールの話でしたが、部分的に導入するもまとめて導入するも、マーケティングの基本設計が重要です。設計があれば、それに基づき必要なことから始めたら良いと思います。
結果的に、部分的に始める企業もあるでしょうし、まとめて導入する企業もあるでしょう。結局は企業のマーケティング戦略次第になるのではないでしょうか。

SaleTechの中でも、直近ではインサイドセールスに興味を持つ企業が多いかと思いますが、庭山さんが考えられるインサイドセールスを成功させる為のポイントはどこだと思いますか?複数あれば全て教えていただけますでしょうか。

インサイドセールス部隊だけを作るのはおすすめしません。後は先程お話している通り、マーケティング全体設計の中でインサイドセールスのKPIを決めること、必ず後工程で必要な数から逆算すること、マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールスの全体最適を考えたうえでの設計と運用です。

インサイドセールス部隊は自社内で持つべきかアウトソースすべきか、どちらを推奨されますか?

私は社内で持つことを推奨します。インサイドセールスは基本的にはADR(Account Development Representative)或いはBDR(Business Development Representative)に進化させるべきだと思います。これらをアウトソーシングで進化させられないのが、内製化をお奨めする理由です。
ただ、繁忙期などはコール数がオーバーフローしてしまうこともあるでしょうから、そうした場合はアウトソースを検討するというロードバランスはするべきだと思います。コア部隊に関しては内製化の方が良いと思います。おそらく、日本企業がマーケティング部門で内製化しやすいのはデータマネジメントやリードナーチャリングではなくインサイドセールス部隊だと思います。やはりBtoB企業のインサイドセールス部隊はある程度、自社の製品・サービス知識がある方が望ましいと考えます。

―良く聞く話で、営業で成果が上がらなかった人材ではなく優秀な営業にインサイドセールスの立ち上げを任せた方が良いと言われますが、いかがでしょうか?
私は社内で営業経験があれば優秀な方でなくても良いと思います。ただし、リードナーチャリングがしっかりとできているということが前提条件です。おそらく優秀な営業を配置した方が良いという考えは、アプローチリストの質が悪いからではないでしょうか。弊社のインサイドセールス部隊は比較的高いアポ率です。確かに優秀な人材ではありますが、特別なことをしている訳ではなく、リードナーチャリングがしっかりされているリストに荷電をしているのでアポ率が高いということなのです。

―一定期間アウトソースし、成果が上がるようになったスキームを内製化するのはいかがでしょうか?
それは良いと思います。1年間くらいアウトソースでトークスクリプトターゲットリストの精査を行ってもらいそのスキームを内製化し、更にブラッシュアップするというやり方は良いと思います。

マーケティングとインサイドセールス、インサイドセールスとフィールドセールスの連携がうまくいかない企業があると言われますが、何故そのようなことが起きるのでしょうか?また、解決策はどのようなことがありますか?

全体設計した上で役割分担をしっかりとすることです。部分最適の場合、努力すればするほど達成しようとしている目標が他の部門の迷惑になる可能性も高くなります。従って、全力を尽くす前に先ずは全体設計することが重要です。弊社では長年お取引させていただいている企業様でも、月ごとに「今月は何件コールしましょうか?」という確認を取るようにしています。理由は営業が稼働できる時間を確認する為です。営業が稼働できないにも関わらずアポを取得しても、何の意味もありません。お客様から「話を聞きたい」と言われているにも関わらず、「訪問できません」となれば企業としてのイメージダウンにも繋がりかねません。その為、決まった契約件数があっても、営業の稼働状況次第では減らすなどの対応をしています。一度、全体最適をしたからと言って、営業の状況を確認しないままリード獲得し続けたり、アポ取得を続けたりすると連携がうまくいかなくなることが多いからです。
リード獲得〜受注までの全体設計をした上で、状況に応じて再度全体設計をすると部門間で軋轢が生じることもなく、企業の売上にも貢献できるのではないでしょうか。

―経営層は営業の状況に応じてアポイントの調整をすることに抵抗があるのでは?
仰る通りです。ただし、弊社とお取引がある企業の経営層はご理解いただいています。経営層の方は営業が社内にいると不安になるものですが、生産能力を超える受注は企業にとってもマイナスになり兼ねません。予算達成した営業に特別休暇を与えることを提案してもなかなか受け入れてもらえず、では目標達成した社員は社内で勉強をさせるなどするのはどうかと言うと、それも難色を示される方が多い。このような環境下では、米国のような優秀なマーケターはなかなか育たないのです。マーケティングをしている方も意識を変えることは勿論ですが、私は本格的にマーケティングに取り組もうとしている会社の事業責任者や経営層こそ意識を変えなければならないと考えています。


シンフォニーマーケティングについて
事業内容
・マーケティング戦略の立案
・顧客・見込み客データ管理サービス
・Webマーケティングに関するサービス
・マーケティングオートメーション導入・運用支援サービス
デマンドセンターの構築・運用支援サービス

参照URL:https://www.symphony-marketing.co.jp/company/